③ 「ジャズ喫茶私語禁止」再考

ジャズ喫茶

「ジャズ喫茶私語禁止」

何度も繰り返されてきたテーマです。結論は毎回「選択肢があるのはありがたい」でした。そこを今一度。

60年代黄金期にできあがったこの文化は、想像はできます。当時はレコードは高値の華。簡単には一般市民には手が届かなかったものです。

「どこどこのジャズ喫茶では新しくこの輸入盤が入った」

そこで、ネット情報顔負けの迅速な口コミで噂は広がり、お客さんは集まります。満員のお客さんに向けてかけられる爆音の音楽。当然熱気むんむんです。こんな経験してみたかったなあ。

貴重な時間です。一音一音聞き逃したくない。周りの雑音が非常に気になります。おしゃべりはおろか、新聞をたたむ音すら気になる。摩擦がしばしば起きます。やむを得ず「私語禁止」として店、客、双方の自衛を図った、というのがDUGの中平さんの証言です。

さて、それは現在ではどうなのでしょうか?

今都内ではっきりと「私語禁止」を打ち出しているのは私の知る限り「いーぐる」さん(夜は除く)、「OLYMPUS」さん、「NUTTY」さん。

ところで、今、レコード/CDが買えないのでジャズ喫茶に行くお客さんはあまりいません。それでは彼ら・我らは何を求めて3件(+α)に向かうのでしょうか?

そこに「日本の文化」が現れていると思うのです。

「仮に家にあってももっと立派な音で聴きたい」「マスターの絶妙な選盤に浸りたい」何だっていいです。高度な「求道」の空気に満ちているような気がします。

店は店で、そんな客の要求に応えます。応えられるところが残るのでしょう。あるところは定例的に講師を呼んでセミナーを開催する。あるところは「ミュージシャンの魂を聴き取れ!」と前面に出します。徹底的に「お客さんへの提供に拘る」

時代の流れに即し、骨格はゆるがせずに、微妙に形を変えて長い歴史を刻み続ける。立派な日本の文化だと思います。

ところで、この「私語禁止」の難点は「コミュニケーションの欠落」にあります。せっかく詳しいマスターから話を聞きたくても、出せる言葉が「コーヒー」「お勘定お願いします」だけではどうしようもありません。その分、店はお客さんの表情をしっかり観察されていると思います。店からの提供にできるだけフィードバックできるよう一生懸命だと思います。しかしそれでも足らないところをSNS等で補っていけるといいと思います。

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