「おばちゃん、この朝鮮人参エキス、一個なんぼや?」
「2万ウォンや」
「じゃあ、3個やったら、4万ウォンやな」
「あほか、計算でけへんのか! せやな、5万ウォンでええわ」
「あかんあかん」
「ちょっと一杯飲んでみい」
「うまいなあ。これやったら4万五千ウォンでええわ」
「しゃあないなあ」
初めて出張で行ったときの経験です。もちろん関西弁ではないし、ほとんどが身振り手振りでごくわずかいい加減な韓国語での会話でした。でもちゃんと予定していた親への土産も買えました。時は1987年。オリンピックを翌年に控え、街中はビルの新築ラッシュで沸き上がっていました。泊まったホテルは都心まん真ん中。その近辺の地下街に、こういったのどかな店が並んでいたのです。東京に例えると丸の内から新橋にかけての一帯に、上野や浅草が同居している感じ。この上野、浅草が寛げるのです。
その後も韓国とのお付き合いはずっと続いています。のんびりワールドから洗練ワールドに突入しました。ある友人との邂逅をきっかけに。
最初は仕事で出会いました。ほんの挨拶で私の勤務している会社の応接室で会って名刺を交換しました。よほど印象がよかったのでしょうね。別件での出張で韓国に行ったときに、アポとアポの合間の時間に、ふと公衆電話が目に止まり、その人の番号を、いつの間にか回していたのです。すぐに出られました。
「ああ、xxさん。こんにちは。えっ、今、ソウルですか?だったらこれから食事しましょう!」
お話はこれだけです。この一言は「懐に入り込むのに十分」ではないでしょうか。もちろん突然の昼食はこちらだってできるものではありません。丁重に次の約束?をして電話を切りました。しかし、その後30年ほど、不思議な関係は続いています。十年以上齢が離れ、社会的立場も全然違うのに、友人と呼ばれる。他に言いようがないので困っています。その人のご自宅に泊めていただき、洗練ワールドをいつも紹介されながら、時折伝統のんびりワールドに入り込み、刺激的な旅を定例的に楽しんでいます。
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